研究者・エンジニアに必要とされる英会話スキル
デジタル化が急速に進み国境の枠を越えてデータの流れが加速する中で、世界中の科学者、研究者やエンジニアなどが協働する国際規模な共同研究や技術開発、イノベーションが増えています。高い技術力と専門性をもとに国際開発研究の公用語である英語を自在に操り、複雑な利害関係を円滑に調整できる研究者、科学者、エンジニアがこれまで以上に求められています。
しかし、日本人の英語力は世界に比べて非常に低い状況です。2019年のデータによれば世界のTOEFLテスト受験者の中で、日本は170カ国中146位、アジアでは下から3番目、OECD(経済協力開発機構)加盟国中ではなんと最下位でした。また、タイムズ・ハイアー・エデュケーションの2021年度版世界大学ランキングでは、日本首位の東京大学は36位で、世界的な研究の影響力(学術的引用数)と大学の国際性(日本人学生の留学比率、留学生や外国人教員比率、外国語で行われている講座比率、国際交流教育や国際共同研究の割合)が低いという問題点が指摘されています。
更に、文部科学省による「科学技術指標2020」でも、国の研究開発力を示す指標の一つである自然科学分野の論文数で、日本は10年前に比べ前回調査順位を下げ、3位のドイツに次ぐ4位となり地位が低下しています。このような結果を受けて、日本政府は、技術開発予算の増加、大学のグローバル化のための大学改革を急ピッチで実施しています。この記事では、研究者やエンジニアに必要とされる英会話のレベルや役に立つ英語資格などについてご紹介したいと思います。
エンジニアや研究者が、英語力や英会話力を磨く目的とメリットは?
科学者、研究者やエンジニアが英語を習得し英会話力を磨く目的として、
(1)日本における研究開発で得られた知見を学会で発表したり研究雑誌に投稿する
(2)海外の大学、組織や研究機関に留学して勉強したり、研究活動や研究業務に従事する
(3)日本で就職したり転職する際に有利なスキルとしての英語を習得する、という主に3つの可能性が考えられます。
論文投稿
(1)の学会発表や海外研究誌への論文投稿では、自分の研究が世界で実施されている研究に比較し、最新かつ意義のあるものであることを確認し証明するために、常に世界の最新の研究開発動向や情報を把握していなければなりません。そのためには海外研究雑誌・論文を読んで理解できる読解力と専門知識が必要です。
海外活動・研究活動
(2)の海外留学や研究活動などにおいて、研究者やエンジニアが英語スキルを向上させると、海外企業から受注する仕事や海外機関との共同研究などが増える可能性があります。また、日本や多国籍企業の開発部門で働いたり、ベンチャーに参加したりする場合にも英語で仕事が行えるだけの極めて専門的な英語能力が必要になります。研究論文や、大学院などで使われる教科書に使われている英語はアカデミックイングリッシュと言われる学術英語であり、アカデミックイングリッシュができなければ留学しても勉強についていけなかったり、研究が思うように進められない、学会発表が困難となるなど、世界で通用しないと言っても過言ではないでしょう。
就職・転職
そして、(3)の就職・転職ですが、専門知識やエンジニア技術に加えて、高レベルの英語能力は外資系企業への就職や転職に不可欠であるのはもちろんですが、日本企業への就職や転職においても、英語スキルを証明する資格を有する人材を特に優遇する企業への応募などが可能となります。
技術者やエンジニアに高度な英会話は必要か?
次々に新しい専門用語が追加されるコンピューターサイエンスの分野では、開発環境は常に大きく変化しており、専門用語は既に英語であるため、英語を話すエンジニアとの会話においてはそれほど複雑な英会話ができなくても仕事ができると言われています。
また全てオンラインでデータ共有したりシステム構築ができるようになり、品質やタスクの管理をリアルタイムで行うためにchatworkやslackなどを駆使して英語「対話dialogue」ができるレベルの能力が必要となります。
更に、日本の製品を海外で販売する場合や海外の製品を使用して日本で開発販売する場合などでは、最新の専門分野の技術英語書類(製品の仕様書、指示書、解説書など)を翻訳せずに英語のまま理解し情報を即座に活用できるタイムリーな英語応答能力が、第一線で活躍するエンジニアにとっては重要となります。
研究者に必要な英会話能力とは?
一方、研究者が学会発表や、学術論文の主要査読雑誌に投稿し、英語での論文や書籍の出版を目指すためにはさらに高度な英会話能力が必要となります。具体的には、
(1)英語で自分の論文について発表することができる(学会や会合などで)また、そのために英語で論文や報告書を執筆し雑誌社とのやりとりなどができること
(2)海外の研究資金や研究員奨励金を英語で申請したり問い合わせを行うことができる
(3)英語で行われる研究会合や科学分野のコミュニティで、科学的根拠やデータを用いて効果的な議論することができる高度な英会話力
(4)英語で行われる授業に参加したり、授業を実施することができる
(5)査読や文献批評などを英語で執筆・伝えること
などが考えられます。
これらの英会話能力に共通するのは、高い専門知識に根ざした専門的な会話ができるということです。海外の研究会合や学会で必要な話し方は、流暢で完璧な英語でなくても問題はなく、いかに明瞭簡潔な英語で、科学的な議論を理路整然と行うことができるかということなのです。そのためには、高度な専門知識を有し、最新の研究手法をマスターしていること、科学専門英語をまず理解すること、アカデミックな研究語彙が豊富であること、研究の手法・結果・考察について英語で説明するシーンの言い方のパターンを知っていることなどが求められると考えられます。
研究者やエンジニアに有利な英語資格は?
英語の民間試験の中でもTOEICの高スコアを所持していると、日本での就職や転職の際にアピールできるポイントになります。他には工業関連の英語能力をはかる工業英語能力試験があり、工業分野の専門用語の知識に加えて、科学的根拠に基づいた事実を正確かつ簡潔に伝える能力が問われます。工業英検は1級から4級まで存在しますが、一般の英語能力検定試験に比べてITエンジニアとしての実務に直結する技能なので、準2級から3級を有しているだけでもITエンジニアへの就職に有利になります。
研究者が海外の大学院や研究所で研究する場合に取得しておくと有利な資格は、大学や受け入れ機関や国別に異なりますが、海外大学院留学に必要な資格とほぼ同等と考えて良いでしょう。つまり、医学、医療系の研究者では、OET試験で最低でもBレベル、TOEFLでは90−100 (イギリスなどでは最低でも90以上)、IELTSでは7-7.5レベルが必要です。これらの数値は、日本本学術振興会が規定する、「海外で研究活動を行うにあたり、相応の語学能力(英語であればTOEFL(Internet-based)79点、TOEIC730点、英検準1級のいずれか程度)を有することが望ましい」レベルより高い設定ですが、世界の研究者と肩を並べ研究するために高度な英語レベルが必要であることは間違いありません。
まとめ
ノーベル化学賞の白川英樹博士は、日本IBM社のインタビューで、「母語であり日本の公用語である日本語をしっかり身に付けた上で、まず日本語でしっかり考え、理解し、それを的確に伝達できるようにする。日本語で論理的に説明できない人が、英語で論理的に説明できるはずがありません」と述べておられます。まずは母国語で研究を論理的に実証し、その研究成果を世界に発信するためのツールとしての英語や英会話を活用することができることが望ましいということが言えると思います。
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